近年、多くみられる猫の疾患の一つとして結石(主にシュウ酸カルシウム結石)による尿管閉塞が挙げられます。尿管結石が両方の尿管に詰まってしまった場合には尿毒症となり、放置すると死亡してしまうとても怖い疾患です。
大きな尿管結石であれば単純X線写真でも描出できますが、小さな尿管結石は診断が困難です。超音波検査にて尿管、腎盂の拡張があり、拡張した尿管に結石が認められた場合、尿管閉塞と診断できます。ただし超音波検査においても腸管の空気などに妨げられ、尿管結石の描出ができない場合もあります。当院では超音波検査により尿管結石が確認できた場合、あるいは尿管結石の存在が強く疑われる場合、CT検査を用い手術を行います。
尿管結石の手術には尿管切開術、SUB System挿入術、尿管ステントが挙げられます。当院では尿管切開術を第一選択としています。
マンチカン 避妊メス 2歳2ヶ月
4日前からの食欲不振、嘔吐、尿が出ていないとのことで来院。
血液化学検査において、BUN(尿素窒素) 189mg/dl(正常値:12-32)、Cre(クレアチニン) 15.1mg/dl(正常値:0.7-1.8) と腎臓機能検査の値に著しい異常が認められました。
術後4日目には、BUN 38.7mg/dl、Cre 2.2mg/dlと腎臓機能検査の値も下がり退院しました。現在、術後1年1ヶ月になりますが、経過は良好です。
当院では、尿管結石を摘出しても炎症などによる尿管狭窄で尿管の開通性が確認されない場合のみ、SUB Systemを挿入しています。
Dr.Chick Weisseが開発した、腎臓に挿入した腎瘻カテーテルを膀胱カテーテルに皮下でつなぎ、動物の尿管を迂回して腎臓から膀胱へ尿を送るシステムです。全てのカテーテルを体内に留置することができる、優れたシステムです。
腎臓に挿入した腎瘻カテーテルを皮下のポートにつなぎ、ポートにつないだ膀胱カテーテルを膀胱に挿入して、尿管を通さず尿を腎臓から膀胱へと排出します。
当院で実施した尿管閉塞に対するSUB System挿入術の1例